捉え方や認識の仕方で見える景色が変わることがあります。
そういった捉え方や認識を大切にしながら「ストレス」と「反すう」について説明していきます。
ストレスの誤解
ストレスを減らしましょう、ストレスは体に良くない、ストレスはなくなるべきなどストレスがどちらかというと悪者方向へ認識されることが多い時代です。
確かにストレスの長期にわたる蓄積や強いストレスによってこころやからだに負荷がかかり、病気になってしまったり、気持ちやエネルギーがでにくくなったりと悪影響があることは間違いありません。
しかしすべてのストレスが悪いものかというと、どうでしょうか?
悪者だけじゃないストレス
ストレスは「負荷」とも言えます。
つらく苦しい時は、負荷をなくしていくことで気持ちが楽になったり、からだに良い影響が与えられることも少なくありません。
しかしストレスの対象であるストレッサー(負荷)を減らす方向に行き過ぎると、ストレスに対する抵抗力や耐久力はあまり変化を期待できませんので注意が必要です。
大変な時はストレッサーを減らすことはもちろん大切です。
ある程度の負荷があって、負荷に対するチカラが備わるものです。
負荷が負荷に思わないぐらいのチカラをつけるほうが重要だと感じます。
心理療法にはそういったことが可能な技術があります。
自分の中で上手にストレッサーの負荷を扱うチカラがストレスマネジメントの大切な肝になります。
ですので一概にストレスが悪者といえない理由です。
普段の生活である程度の負荷があってその負荷に耐えうるこころとからだが出来上がるものです。
ストレスとストレッサーについてこちらで詳しく説明しております。
反すうとは
反すう(英語:rumination)とは、物事を何度も繰り返し考え続けてしまうことを表す言葉です。
ぐるぐる同じことを考えてしまったり、過去のことを何度も考えてしまうことは誰しも経験していると思います。
ストレスを感じて、そのことを何度も何度も反すうして考えてしまうことによって疲れたり、こころやからだに負荷がかかったり、反すう自体がストレスになってしまうことがあります。
「反すう」によってネガティブに考えすぎてしまったり、過去の出来事と関連させたり、あの人はこう思っているはずだと思い込みが強くなったり、またこうなるだろうと予測してしまったりしてしまうことがあります。
そこから自分への批判や自責が行われ落ち込んだり、いろいろなことが億劫になったりすることがあります。
うつ病と関係が深いことも指摘されています。
反すうは、「沸き上がってくるような自動的反すう」と「思考の癖としての能動的反すう」に分けることができます。
「沸き上がってくる自動的な反すう」はコントロールがなかなか難しい特性があります。
思考の癖としての「能動的反すう」は、反すうしないように心がけることで少しずつ癖が変化してくることも知られています。※難しい場合もあります
そもそもなんで「反すう」がでるのか?
なぜ「反すう」という機能が人間にはあるのか考えていきます。
「反すう」が出やすい状況として以下のような流れがあります。
自分が想定していなかった出来事が起こる
↓
自分の信念や価値観などが揺さぶらる
↓
その出来事が危険や脅威といった評価付け
↓
反すう
上記のように、自分の信念や価値観などが揺さぶられる出来事が起こり、危険や危機だという評価を行うことで反すうがでやすくなる可能性があります。
なんでこうなっちゃったんだろう?
何が間違っていたんだろう?
というそうなる予定ではなかったという想定があることが多いと言えます。
失敗やミス、ショックな出来事などが起きると自分の信念や価値観が揺さぶられることがあります。
そういった危機に対して、肯定的に捉えると
問題の解決のために反復して悩みながら解決の糸口をみつける
次回のために未然に防止する策を考えるための反復
のための人間に備わった機能と言えるかもしれません。
反すう自体悪いものなのか?
ストレスもすべてが悪いものではないことを書きましたが、「反すう」ではどうでしょうか?
反すうに関しての論文から引用したものを紹介します。
受動的に自身の状況と失敗体験を比較して考え込む反すうをbroodingと呼び,対照的に,憂うつな気分を軽減させるため,意識的に認識して問題解決しようと熟考する反すうを reflective pondering と呼んでいる。brooding は,短期的,長期的に抑うつを強めやすく,適応的ではない反すうである。一方で,reflective pondering は, 短期的には抑うつを強めるが,長期的には抑うつとの 関連がほとんどなく,問題解決効果によって抑うつ気 分を減少していく適応的な反すうである
反すうが自動思考と抑うつに与える影響 1 – J-Stage
「自己批判的な内省」なのか「問題を解決していくために熟考する内省」なのかによって反すうの方向性が異なります。
問題解決型の反すうに持っていければいいですが、解決しようとしてもなかなかすぐに解決できないことも世の中には多く存在します。
そういった場合、「自己批判的反すう」が出やすくなるとも言われています。
「反すう」は問題を解決するために必要な内省ではありますが、解決できない状況によるストレスが慢性化したり、強い自己批判によってより問題を悪化させることもあると言えます。
自己批判的な内省の反すう
自己批判的な内省をしてしまう「反すう」が起きてしまうのはなぜか?
・遺伝的要素
・幼少期の養育
・思考の癖
・性格的要素
・ショックな出来事の遭遇
・うまくいかないことが続いた状況
などによって「反すう」が出やすくなると言われています。
一言に自己批判である自分を責める思いが悪いわけではありません。
自己内省があって、自らを変化させるたり、自己成長させることにつながるからです。
しかし自己批判が強い場合や長期にわたる場合は、なにかしら打開策を考えていく必要があります。
反すうのセルフケアとできること
「反すう」に関してここまで書いてきました。
こころやからだを休める
運動やスポーツで汗をかこう
ほかの集中できることを探しましょう
など一般的にいわれている対処法は大切です。
しかしそれだけでは難しい状況も多々あるものです。
セルフケアと自分で出来ることをここでは紹介しますが、あまり無理しすぎるのはよくありません。
やってうまくいかなくても失敗とあまり受け取らなくていいです。
ただ知ることだけでもまずは十分な場合もあります。
反すうを知る
まず大切なのは、なんでこんなに「反すう」してしまうのか?という疑問が少しでも拭えることです。
そういったことで「反すう」が出ていたんだ!ということを知ることで少し力が抜ける場合があるからです。
「反すう」自体悪いことだ、と良くないイメージを持つことによって「反すう」がでてしまうこと自体に否定的な感覚になりやすいからです。
またくり返し考えてしまう、なんで自分はぐるぐる考えてしまうんだ。。。と「反すう」がでてくること自体で落ち込む要素になってしまうことがあるからです。
「反すう」は肯定的側面からみれば問題解決の糸口を探すためのものという捉え方も必要かもしれません。
否定的側面だけではなく肯定的な側面も知ることによって本来の「反すう」が見えてくるものだと思います。
人間でも同じですね。一方から見るとこうだけど反対から見ると違うことってありますよね。
そしてもしかしたら自分で思っているよりも強く「問題を解決したいんだ!」という深い肯定的な思いから出ているのかもしれません。
それは本来とても素晴らしいことです。
妄想性を知る
「反すう」によっていろいろ考えていると
こうなんじゃないか
あの人はこう思っている
みんなこうなんだ
こう思われるんじゃないか
こんな自分は最低最悪
という事実以外の可能性の検討に入る場合があります。
この検討をやめましょう、といってやめられる場合はいいですが、そうでない場合もあります。
その場合、この検討を行ったあと冷静になってから事実以上の推測、予測、勝手な判断、妄想であるかどうかを再検討してください。
いつのまにか、思い込みが強くなってそうなんだ、絶対そうだと事実にすり替えてしまうことがあります。
そう思ってもいいですが、一方で「反すう」から考えた妄想性で思い込み強くなってるなという認識も必要です。
思い込んでいくと自分の世界では、事実となってしまい、対象の相手の本心も聞くと違うこともあります。
「事実」と「推測した考え」を分けてみることです。
しかしこのあたりは慎重に扱う必要もあって一言ではなかなか言い表せないのが現状です。
強い妄想が出る場合は、カウンセリングや心理療法をおすすめします。
周囲の方へ理解を求める
またそんなに悩んで
またそんなに考えて
なんでいつもそうなんだ
と周囲の方から理解されないことがあれば、周囲の方へ理解を求めることで気持ちが楽になり、「反すう」が減ることもあります。
「またそんなに悩んで」って思われたり、言われたりしないかな
「またそんなに考えて」 って思われたり、言われたりしないかな
「なんでいつもそうなんだ」 って思われたり、言われたりしないかな
という気苦労が減ることがあります。
その場合、このページを紹介してみると少し理解できることがあるかもしれません。
でもなかなか周囲が理解してくれないこともあります。
そういった場合、つらいですが、他に協力してもらえる方を探してみることも必要かもしれません。
今に集中してみる
「反すう」で得れるものもあれば、かえって苦しくなることもあります。
今やるべきことに集中することで自信がついたり、気にならなくなることがあります。
マインドフルネスなどで「今ここに」という考えが流行するぐらい、誰にとっても必要なことかもしれません。
今やるべきことにフォーカスできなかったり、「反すう」がでてしまったり、ついつい自分で考えちゃう場合は、できなくても大丈夫です。
あんまりこうしなきゃと強く思わなくても大丈夫です。
先送り
「反すう」が出た際に、あとでやろうと肯定的に先送りする方法です。
「反すう」に抵抗するのではなく、いい意味で活用しようとするスタンスです。
最初はうまくできなくても徐々にできることがあります。
しかし強く長く続くような「反すう」には難しいかもしれません。
強く長く続く自己批判的「反すう」は
どうしようもない一番苦しい時期は、周囲のサポートやお薬、カウンセリング(心理療法)などを使うことが大切です。
自分だけで乗り越えれるものと難しいものがあります。
ストレス対処能力(コーピング)が高い人ほど周囲のサポートをうまく利用するということが分かっています。
少し余裕があるときは
少し余裕があるときにできることとして書いて「客観的にみる」ことや「気づき」を得ることができます。
ノートや日記、スケジュール帳などへ記入することでアウトプットできます。
習慣的に付ける事によって見えてくるものがあります。
1.勝手に出てくる「反すう」だったかのか?自分で考えた「反すう」だったか? (例:勝手に出てきたけど自分でも考えていった)
2.どんな「反すう」がでたか(例:あの失敗が思い出された)
3.どんな考えや方向に行ったか(例:自分を責めた・後悔)
4.どれくらいの時間でたか(例:20分ぐらいのが4回)
5.どこに行き着いたか(例:解決法が見えなくて落ち込んだ)
6.ストレス度合い(例:一番ひどい時からみると85%)
7.冷静に見たときどう思うか
(例:つらい、もうこういう考えを繰り返すのは嫌だ、まだつらいけど前よりはマシ、やっぱり解決したいんだ、でも解決法がわからない、)
8.いますぐに解決できる問題か否か(例:長い目で見たほうがよさそう、でも早く解決したい)
9.気づき(例:早く解決したいと焦っていた、長い目で見ることも大切だな、しんどいのも仕方ないな今は)
10.行動するといいこと(例:やっぱり本人と話そう、やっぱりウォーキングして汗流そう)
反すうとひとりこころのなかで
ホスピスに入院している家族の死別を 1 ヶ月以内に経験した人を対象に反すうとソーシャルサポートとの関連を検討したところ,ソーシャルサポートを 多く受けている人は反すうが低く,抑うつも低いことが示された。また,反すうを行ないやすい人は社会的孤立や対人摩擦が高く,ソーシャルサポートを受けていないと報告することが多いことが示された。
ネガティブな経験の反すうとレジリエンス 及びソーシャルサポートとの関連
上記引用は、「反すう」はサポートがあるかないかで変わってくるという調査結果です。
ひとりこころのなかで乗り越えていくことも大切ですが、
話してみる、聞いてもらう、理解してもらう、協力してもらうことも大切です。
「反すう」に対するカウンセリング
反すうは一概に悪いものではないですが、「自己批判が強い反すう」やなかなか解決できない状況があれば当カウンセリングでできることがあります。
「反すう」する内容を話してみる、聞いてもらう、理解してもらうことは最も基本的で重要なことです。そして、
「そうなる予定ではなかった」
「自分の信念や価値観」
「危機・危険評価」
「自己批判を強くする因子」
などにアプローチをする心理療法によって徐々に
気持ちが軽くなる
反すうが減る
不必要な反すうがなくなる
問題解決型傾向の反すうになる
などが期待できます。
参考論文
ネガティブな経験の反すうとレジリエンス 及びソーシャルサポートとの関連
反すうが自動思考と抑うつに与える影響 1 – J-Stage